2月28日 本番
「雪の降る日に」

本番前の楽屋

いよいよ本番です!
楽屋で最後の気合を入れて、
緊張する心と身体を奮い立たせます。
演劇の講師の先生方から
本番直前の声援をいただきました。

 
本番前の楽屋

担任の先生から
いつもの気合入れが入りました。
「みんな、ヒーローになりたいか!」
「おー!」
「鉄の心をもて!」
「おー!」
劇中の台詞がみんなの合言葉です。

 「雪の降る日に」

(オープニングのダンス)

(「では、次のニュースです。」)

ある大雪の日、塾帰りの里留たちが見つけたのは
心臓の音が人とは違う女の子でした。

テレビでは、そんな子どもを見つけたら
通報するように呼びかけられていました。

でも里留たちは、それを秘密にして、
ユキと名乗るその女の子と友達になりました
ユキちゃんも教室にもすっかりとけこんだ2月のある日、
学校に転校生、坂本くんが来ました。
「・・・くだらないクラス。」
クラスのみんなは驚きます。
突然、警官たちがやってきます。
「心臓の音が違う、転校生がいると聞いたのだけど、
 だれかな?」

転校生の坂本君は、心臓の音が違う子どもではないかと、
疑われていたのです。
でも、坂本君はふつうの男の子でした。

「あそこで手を挙げるなんて
 坂本君って勇気あるなぁ。」
「ちょっと見直しちゃった。」
「みんな、私の心臓の音、聞いてくれる?」とユキちゃん。
みんなはびっくりしてユキちゃんを見ます。

「心臓の音が違ったって、友達は友達だよ。」

みんなは話し合った結果、
そのことを警察に秘密にして
ユキちゃんを守ることにしました。
そんな騒ぎの中、
何やら一人、寂しそうな梨香子さん。
音楽室で悩んでいると、
クウ(空)という不思議な女の子が
ピアノを弾いて元気付けてくれました。

どうやらクウとその家族は他の人には見えないようです。
音楽室には、科学者たちが隠れていました。
音楽家でもある彼らは
やさしい気持ちになる、という
その心臓の音を研究しているのでした。

クラスのみんなは、科学者たちと一緒に
ユキちゃんを守ることにしました。
学校の周りを警官隊が取り囲みます。

「ほくたち、はじめからやる気ないから。」
「だから選ばれたんだもんな。」

署長は厳しくはっぱをかけます。
「いいか、相手は爆弾を抱えているんだぞ。」
「ヒーローは鉄の心を持て!」
「おー!」
学校にはテレビの取材が来ています。
「どうやら音楽室に立てこもっている模様です。」
「音楽室なんだ!」
里留の家族もテレビを見ていて大慌てです。

「俺、今、患者の歯を抜いている途中なんだけど・・・。」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう。」
「待ってってもらいなさい。」
「それもそうだな。じゃあ行こう。」
みんなでユキちゃんを守るうちに、
いろいろな話が打ち明けられました。

坂本君が、人を誰も信じられなくなった理由、
梨香子さんがみんなに言い出せなかった悩み・・。

お互いを信じることの大切さを実感したのでした。
ユキちゃんの心臓の音を聞かせられれば、
警官たちだって優しい気持ちにできるのに。
でもその前にきっと捕まってしまいます。

「どうすればいいんだよ!」

「あたしの心臓の音がみんなを優しくするんじゃないよ。
みんながもともと持っている
やさしい気持ちを思い出してるだけなの。
その人にとって大切な
音や言葉を聞いて・・。」

「ユキちゃんの心臓の音を聞かせなくても
あたしたちがつくればいいんだよ!
優しくなれる音や言葉を!」

どんな音?どんな言葉?
「海の波の音。」
「葉っぱの揺れる音。」
「お母さんに歌ってもらった子守唄。」
「赤ちゃんの笑い声。」
 ・
 ・
一つ一つの「優しくなれる音や言葉」から
みんなで作った歌、
「ありがとう」へとつながります。

次第に歌の輪が広がっていきました。
最後まで頑なにがんばっていた
警察署長の心もついには動きました。
「署長、泣いているんですか。」
「・・・ユキちゃん、ありがとう。」
雪が降ってきました。
お迎えが来たから、といってユキちゃんは
行ってしまいます。

「雪は音がしない・・。もしかして。ユキちゃん、君は胸の中に、
小さな音や小さな声を、包んでもっていてくれたんじゃない?
そして人が完全に忘れてしまう前に
聞かせに来てくれたんだね?」

ゆっくりうなずいてユキちゃんは雪の中に消えていきます。

ユキちゃんに、周りのみんな全てに「ありがとう」を歌います。

静かに雪が降る中、みんなで静かにやさしい音に耳を傾けます。
下の学年の子どもたちは
六年生の熱演に
じっと見入っていました。

「涙がでちゃった。」
「六年生になったらこういうの、やりたいな。」
そんな思いが六年生にも伝わってきました。

公演は大成功!
終了後の楽屋での表情です。

手をあげてもらうまでも無く、
みんなの表情から満足感が伝わってきます。