5月30日  永井愛さん
「即興劇」
オープニング
 講師の永井愛さんです。劇作家として第一線で活躍されています。今日の授業では「場所をつくる」が課題でした。
 自分のイメージを明確に発信していくことの大切さ、
相手のイメージが何なのか感じとる難しさを教えてくださいました。
場所を作る 「5つのイス」@

 線で区切られた向こう側が舞台です。線から向こう側では、普段の自分から変わり、自分のやりたいようなイメージを形にするのです。
 
 今回の舞台はイスが5つならんでいるだけ。

 初めの一人目の役者がえらそうにイスに座りました。「社長室」のイメージです。
場所を作る 「5つのイス」A 
 二人目の役者は、イスを2つ使って寝転がりました。病院や、駅のホームなら偉そうに座っている人も寝転がっている人もいますよね。
 
 三人目の役者は、新聞を広げましたよ。すると、四人目の役者は、つり革をもって揺られて立ちました。

 最後の五人目の役者はその場所がどこなのか、よく観察して想像して場所を決定します。「電車のなか!」

それを合図に「電車のなか」での即興劇が始まります。
場所を作る 「5つのイス」B

 社長室>電車のなかに早換わりした次の回では、舞台がお寿司屋さんになりました。
(イメージで寿司をにぎっているのがうまく伝わるかな?)

一人目のイメージを次の役者がイメージを足していき、場を支えるのです。
 


場所をつくる 「5つのイス」C

 この回では1人目が机に向かって、何か書いていました。
次に入った役者も次々と同じ動作をしました。

 (・・・この場所はどこだろう? 教室? どこかの工場? 絵描きさんが写生会をしているところ?)


 
場所を作る 「5つのイス」D

 「教室!」と5人目の役者が入ることで、その空間は「教室」になりました。
 すかさず、「先生、私は○○は正しいと思うのですけれど、みなさんどうですか?」と、即興で教室の風景のイメージで演技が始まりました。
場所を作る 「5つのイス」E

「うまくつないでね、それが大切。」 
イメージをつなぐには、人のやることを良く見ることが大切です。
そして発信する役者は、見ている相手にわからせるところまで、徹底的にやってみせること。
自分のイメージを他人に伝えるって難しい!
場所を作る 「5つのイス」F 

 「舞台にあがったら、わたしはもうこれをやるんだ、と堂々とやってみせましょう。」と永井さん。
 イスに座らないでこういうイメージの空間を伝えよう、と座った役者がいました。
 さあ、この場にどのようなイメージの人物をつないでいこう?
場所を作る 「エレベーター」@

 後半の課題はエレベーターです。
 エレベーターに閉じ込められた人々は、どう反応するでしょうか。

 ・舞台の上にはテープで四角形が区切られただけ。
 ・一人ずつ舞台にあがる(演技に入る)こと
 ・全員、見知らぬ人同士である設定
 ・エレベーターが到着した時、止まってしまった時の合図はある

以上がルールです。

場所を作る 「エレベーター」A

「何階ですか?」
「7階です。」
「100階お願いします。」(!?)

「(携帯電話で)あ、おかあさん?いま、塾につくよ。・・・はーい。それじゃね。」

どこのエレベーターで、自分は何をしにきた人物なのか
あらかじめ考えた自分のイメージを、演技で明確に伝え合います。


 「面白い設定とかで、見ているお客さんを楽しませるのもいいけど、『リアル』という点や『本当らしさ』という点が、見ている人を楽しませるということを知ってほしいですね。」

場所を作る 「エレベーター」B


「ああ、普段の自分もこうやってエレベーターに乗っているな
とか、ああ、きっとこう反応するのが自然だろうな、ということが
リアリティ(現実感)や本当らしさを感じさせて、楽しいのです。」


「・・・ん? 止まりましたかね」
「はい、止まったみたいですね」

本当にエレベーターに閉じ込められた見知らぬ人たちってどんな話し方で、どんな話しをするんだろう。
普段のクラスメイトが知らない人、という設定に苦しみます。

場所を作る 「エレベーター」C

 芝居に入り込んでくると、ところどころが本当にそこにあるような気にさせる演技があります。 
 扉が開きそう!
「本当らしさ」や「本当にそういうことするかな?」と繰り返し助言をくださると、みるみるリアルな演技が出てきました。
平凡なことを演じることが楽しい、日常を再発見する大切な力を
今回の演劇の授業では学べたと思います。

永井さん、ありがとうございました。