2021.11.22校外学習に向けて
新型コロナも現在幸いなことに収まっており、学校の活動も徐々にもとに戻りつつあります。今週は5年生の移動教室、来月には6・7・8年の校外学習も予定されています。いずれもバスで出かけることになりますが、バスが苦手という人もいることと思います。先日、ある銀行が募集している「わたし遺産-私が綴る、未来へ伝える物語-」で次のような文章を見かけました。「わたし遺産」とは自分の心にある大切な「人・モノ・コト」についてのエピソードを400字で語るというものです。
酔えん
遠足に行く朝、母から手作りの小袋入りペンダントを手渡された。「首にかけて『酔えん』と呟けば大丈夫よ」と彼女は真顔で言った。当時、小学生の私は乗り物酔いがひどく、車はおろか遠足でバスに乗るのは苦痛以外の何ものでもなかった。仲間が車内でお菓子を食べたり、歌を唄ったりする姿を、一人ぐったりとシートに横になりいつも眺めていた。白いひもで編まれたペンダントに大きな希望を見出した。不安になる度に小袋を撫でて胸の中で、酔えん酔えんと、懸命に唱えた。そのお陰か、私は初めて車酔いをせず遠足を心から楽しめた。きっと特別な何かが宿っているに違いない。後日、目を輝かせて小袋を思いっきり開けると、一円玉が四枚重ねてあっただけだった。四円だから酔えん?拍子抜けした。40年以上の月日を経た今なら分かる。あのペンダントには、娘を心から助けたいと強く願う母親の知恵と愛情が重ねられて入っていたと。