学校紹介

平成31年度学校便り

学校便り3月号


「春は近し」

校長 黒川 雅仁



心にもあらぬ別れの名残かは 消えても惜しき春の雪かな  藤原定家


 藤原定家は小倉百人一首の撰者として知られ、優れた多くの和歌を残しています。この歌は、本意でない別れがあり、その悲しみを春の雪に例えているのでしょうか。歌人であり政治家でもあった定家の叡智に敬服します。

★現在、世界中で人口知能(AI)の研究が進められ、実用化したものも多くあります。そのような中、AIに奪われてしまう職業も多く発表され、学校もその候補として挙げられることもあるようです。果たして学校は本当にAIに取って代わられるのでしょうか。

★翻って、米国の大学の研究を見てみます。小学校5年生400人を対象に行った実験です。子供たちにパズルの問題を解かせます。終了後、パズルの出来を伝え、一人一人褒めます。成績に関わらず全員を褒めます。半数の子供には「頭がいいね」と褒め、半数には「一生懸命やったね」と褒めます。その後、子供たちに2種類の問題を与え好きな方を選ばせます。一方は、初めのパズルより難しいパズルで、もう一方は最初のものと同じように簡単にできるパズルです。「頭がいいね」と賢さを褒められた子供のほとんどは簡単にできる方を選びました。「一生懸命やったね」と努力を褒められた子供のほとんどが難しい問題を選びました。実験の結論として、「努力を褒められた子供は更に努力を認められるようにと難問にチャレンジするが、賢さを褒められた子供は自分を賢く見せるために間違うことを恐れるようになる」とありました。

★ここで矛盾するのが「AI授業」と「教師の声掛け」です。一定の知識や解答を求めることはできるようになるものの、その評価や教師からの支援は届きにくいでしょう。「一生懸命やったね」という簡単な一言で子供の取り組み方が大きく変わる場合もあります。前述した定家の和歌における暗喩をAIは理解することができるのか。いろいろ考えさせられます。0と1だけでは繋がらない「人間の曖昧な要素」が大切なのであろうと感じます。

★本校では、各担任が一人一人のよさを認め、褒めることを意識して指導しています。日々の努力やちょっとした気持ちの変化に気付くことができるよう、子供たちと向き合い、様子を見て、声を掛けるよう努めています。もちろん、新しく生まれ変わる高円寺学園においても同様です。子供たちのよさを引き出せる学校となるよう、時間をかけて3校合同で研修を行ってきました。先ずは、明日の「閉校記念集会」において、その力を発揮している杉八小の子供たちの様子をご覧いただけると幸いです。     
2月28日執筆




参考文書: 杉八だより3月号









学校便り2月号


「懐かしい思い出 交差する校舎」

副校長 中澤郁実



★「今日はどんど焼きありますか?」
1月18日の土曜授業「かるた大会・どんど焼き」当日は朝から小雨で電話の問い合わせが続きました。校庭の真ん中には親&児の会で朝8時から組み上げた大きなやぐらが点火を待っています。
3校時のかるた大会が終わり、かっぱを着た6年代表児童8名と町内会の方でいよいよ点火!雪のため教室から見守っていた全校児童から歓声が上がりました。火が消えるまで見守ってくださっていたのは消防団の方々です。

★せいろでもち米を蒸し、あんこ・きなこ・醤油・磯部味の餅にしてくださったのはPTAや学校支援本部の皆さん。1年生から順に中学生や地域の方も列に並びました。

★翌日は「ホームカミングデイ」と名付けた校舎見学会です。2年程前から校舎を見学したいという要望が寄せられ、土日の午後に学校支援本部主催で校内を見学できるようにしたのです。3回目の1月19日(日)は最後の機会とあって400名近い卒業生が訪れ、メモリアルルームとして2部屋に掲示した当時の集合写真や卒業文集を熱心に見つめたり、自分のお子さんに語ったり、校庭で木々と対話したりする姿や、様々な年代の同窓会の輪が17:00最後の時間まで見られました。懐かしい学校を通して、人と思いが再びつながっていくように感じられました。

★今、杉八小の子供たちは閉校に向け、杉八小への思いを伝え合いながら最後の時間を過ごしています。今この時間が、ホームカミングデイで見られた閉校しても共に過ごした仲間とのつながりを生む時間になっていくのではないでしょうか。


参考文書: 杉八だより2月号









学校便り1月号


「新年を迎えて」

校長 黒川 雅人


新しき 年にはあれども 鶯の鳴く音さえには 変らざりけり  読み人知らず

★読み人知らずのこの和歌は、「新たな年を迎えたけれど、鶯の鳴き声までは変わらない」と詠っています。杜甫の春望「国破れて山河在り 城春にして草木深し」と同様、自然の壮麗な様子が浮かびます。一種の不易流行でしょうか。ただ、新年に聴く鶯の声は嬉々たるものであるように感じてなりません。

★そのような正月気分を返上し、今日から三学期をスタートさせました。元気な声が学校に戻り、新たな年の初めにふさわしい雰囲気です。子供たちもやる気満々。活力に満ちています。

★さて、令和2年を迎え、いよいよ杉八小が新たな学校へと生まれ変わる年となりました。閉校に伴い、2月29日には記念式典と感謝の会を開催します。様々ある閉校への準備を滞りなく、子供たちにとってより思い出深く、そして地域の方々の想いをしっかり受け止めたものとするために、長い時間をかけて少しずつ準備に取りかかってきました。今後、保護者の皆様や地域の皆様のお力添えをいただきながら、心に残る閉校行事にしていきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

★また、子供たちが杉八小への感謝の気持ちをもつとともに、新しい学校への期待を高めていくねらいで、記念式典の前に児童全員による記念集会も行います。毎年9月に行ってきた「杉八集会」をこのタイミングで行うものです。昨年と同様に誰でも参会することができますので、多くの方にご覧いただけると幸いです。詳細については後日連絡します。

★最後になりましたが、謹んで年頭の挨拶を申し上げます。保護者・地域の皆様方におかれましても、気持ち新たに新年を迎えられたことと存じます。幸多き年となりますことを祈願いたします。また、杉八小としてのこの地での教育活動は3月までの3か月となりますが、今まで同様ご支援ご協力を賜りまして、最後まで杉八小の教育を進めて参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

参考文書: 杉八だより1月号