令和2年度 園だより

1月 芽生えに向かって   園長 五十嵐 美緒子

 新しい年がやってきました。2021年 令和3年 辛丑(かのとうし)です。
 十二支は、そらで言えますが、いまだに十干は、うろ覚えです。そのため毎年、年明けを控え十干について本を開いたり、インターネットで検索したりして、「ふむふむ・・・そういう意味があるのか」と、考えています。子どもの頃に聞き覚えた“き・ひ・つ・か・み”という言葉が、「甲(きのえ)乙(きのと)・丙(ひのえ)丁(ひのと)・戊(つちのえ)己(つちのと)・庚(かのえ)申(かのと)・壬(みずのえ)癸(みずのと)」という文字と読み方だと習ったのは、中学生だったか、高校の古文だったか・・・。“え”が兄で、“と”が弟で、あわせて“えと”と聞いたこと、“き・ひ・つ・か・み”が「木」「火」「土」「金」「水」と知ったこと、十干と十二支を組み合わせて時間や天体、方角などを表していることなどなど・・・。途切れ途切れの情報を、毎年つなぎ合わせては、昔むかしから、自然とともに暮らし、様々な困難や心配事を受け止め、文字に願いを込めたり、数に思いをのせたりしながら、多くの苦難を乗り越えてきたことに、気づかされます。
年が明け、新型コロナウイルス感染症対応は、ますます緊張感を増しています。
基本的なことの繰り返しとなりますが、健康チェックを行い、マスクの着用、こまめな手洗い、室内の換気を徹底し、密を避け、子どもたちが、安心して元気よく過ごすことができるようにしていきます。何よりも楽しく充実した日々を過ごすことが、心と体の健康を支えています。ですから、そうした生活ができるよう、「○○しなさい。」「△△だから!」と方法や答えを出してしまうのではなく、大人も「どうしてかな?」「どうしたらいいだろう?」と考えたり、子どもたちの感じたことや考えたことに「そうなんだ。」「おもしろいね。」と共感したりすることを大切にしていきます。
大好きな大人の姿は、子どもたちの憧れであり、そうなりたいと思う目標にもなります。

『辛丑(かのとうし)』・・・『辛』は、つらい、きびしいといった印象もありますが、“新”という文字にもつながります。十干では、季節としては秋の終わりを表し、実が地面に落ち、種を次の世代につなぐという意味をもっています。十二支の『丑』は、発芽前の芽が、種のかたい殻を破ろうとしている形を表した文字で、種の中で殻を打ち破ろうとするエネルギーが満ちている状況と考えれば、今はじっとエネルギーを蓄え、大きく芽を出し伸ばしていくための準備ととらえることもできます。その日が来るまで、我慢の日ととらえるか、蓄える時ととらえるかで、心持ちは大きく異なります。子どもたちの育ちを支えるために、今年も前向きに、努めてまいります。よろしくお願いいたします。

1月 一年をふりかえって 主査  渡辺 聡子

年明けに遠い国から聞こえてきたように思えた感染症は、新年度早々に休園生活となり、今日に至っています。初めて経験することの多かった年もあとわずかとなり、まもなく新しい年を迎えようとしています。
 例年、冬の時期になると感染症対策に充分に配慮し、安全な生活を送れるように手洗いうがいや咳エチケットの指導をしてきました。十分な配慮をすることで、幼児が集まってホールで集会や会食をしたり、異年齢の交流もでき、年間を通して自己肯定感を育てるたくさんの活動を行うことができました。
今年はウイルス対策にどんなことが有効なのかわからない日々の中、今までの生活を細部にわたって検証しながら、少しずつ有効とわかってきたことはすぐに実行してきました。今まで大切にしてきた活動は、「新しい生活様式」の中でどこまで保障できているだろうか?少し変化させることで同じような活動を行うことはできないだろうか?と、日々悩み、話し合いながらの一年になりました。
 
恐れや不安を感じた時、私たちは脅威から自分の安全や安心を守るための行動をするそうです。
一つ目は「立ち止まる」= 脅威をよく観察する。 
二つ目は「逃げる」= 脅威から離れる。
三つ目は「戦う」= 脅威を攻撃し排除する。
四つ目は「従う」= 脅威に従い、今以上の被害を防ぐ。
これらの反応が不安を取り除き、「自分の命を守る」という大事な役割となるそうです。

私たちはこれからも「正しく恐れる」ことを忘れずに、この状況が子どもたちの不安につながることのないように努めます。まだまだ手探りではありますが、ワクワクドキドキが続く毎日を工夫します。積み重ねの先に、豊かに笑いあえる日常が戻ってくれたらと願うばかりです。

今年一年、休園明けの分散登園など様々なご協力をいただき、ありがとうございました。
来る年が、子どもたちの元気な歓声に包まれた優しい時間となりますように。
皆様良いお年をお迎えください。

12月一人一人に応じた指導          園長 五十嵐美緒子

 先日、杉並区教育委員会主催で、幼児期の特別支援教育研修がありました。講師は、済美教育センター指導教授月森久江先生でした。区内小中学校や大学等で特別支援教育について、ご指導いただいています。子供園でも、一人一人の子どもの姿の理解や援助のあり方について、具体的に教えて頂いています。
 「落ち着きがない」「かんしゃくが多い」「指示が入りにくい」など、幼い子どもたちによくみられる、大人から見ると「困った。」ととらえられがちな姿を示す子どもたちのとらえ方、かかわり方についてのお話でした。就学前の子どもたちの育ちを支えていくために、とても大切な内容でしたので、紹介させていただきます。
表題は「聞く 話す ことばを育てる」でした。

 落ち着きがないなどの気になる子どもたちの姿は、海に浮かぶ氷山の一角で、その水面下には「どうしてよいかわからない」「何をやってよいかわからない」「自信がない」など、見えない原因が隠れています。見えている姿は、ごく一部で、大きな“水面下”の気になる行動をしてしまう“原因”をしっかりと、とらえることが大切です。
 学習能力の獲得のためには、「聞く」「話す」こと、「ことば」の定着が土台となります。その基礎の上に、「読む」→「書く」と、積み上げられていきます。基盤となる「聞く」「話す」ことに、つまずきがないかをよく見ることが大切です。
 「聞く」と一言で言っても、聴覚の認知のレベルは、音に気付く→音の違いがわかる→誰が何を言っているのかわかる→聞いた言葉の意味がわかる・・・など、どの段階に問題があるかを理解することが必要です。
 聞くことにつまずきのある子どもは、聞くことに注意を注ぐことが難しい、音の区別ができない、聞いたことを記憶できないなどの原因で、音を聞いて、そこに含まれていることがどういう意味かを理解することができない状態にあります。
 このような「うまく聞けない」状態の子どもたちは、似た音を聞き誤る、指示道理に動けない、集団行動がとりにくい、文章などの理解が悪いなどの姿を示します。言葉だけの指示ではどのように理解してよいのか戸惑い、それが“落ち着きがないように見える”というとらえ方につながってしまうことがあります。
 子どもがじょうずに聞き取ることができるように、大人が工夫することができます。
・アイコンタクトを取り、これからすることの手順に注目できるようにする。
・言葉だけでなく、絵、写真、物など目で見てわかる手がかりも一緒に示す。
・聞いたことを、繰り返し言わせる、唱和するなど、言葉にする。
・ゆっくり順序よく話す。ただし、複数の指示はしない。(多くても二つまでから)などです。

 大人から見ると「困った」と、とらえられがちな姿は、就学前では、どの子にもみられる姿でもあります。特別な支援を要するお子さんだけでなく、一人一人の子どもたちが、育っていくことができるように、保護者の皆様と一緒に支えていきたいと考えています。
 お子さんとたっぷりと話すことが、聞いて、話し、考える力の素です。お子さんと一緒にたくさん話して、たくさん聞いて、たくさんの発見を楽しんでください。