令和3年度 園だより

11月 みんなの しあわせを 創る         園長 五十嵐美緒子

 2022年からの 杉並区の新しい基本構想の策定を受けて、教育委員会から新しい教育ビジョンが示されました。これまでの『杉並教育ビジョン2012』が10年間で目指してきた『共に学び 共に支え 共に創る 杉並の教育』を基盤として、様々な社会的背景を踏まえ、さらに、これから大切にしたい教育として『みんなの しあわせを創る杉並の教育』をあげています。

 “しあわせを創る”ために どんなことができるでしょう。私は、子どもたちには、まず、何よりも自分のことを大好きになってほしいと願っています。
 私は、自己肯定感が低い性格(意外と思われるかもしれませんが…)です。「小さい頃は、自分のことが好きだった。」のを覚えています。ですが、いつ頃からか、自信が無くなっていったのを覚えています。負けず嫌いでしたから、人と比べてできないことに注目しがち。かといって、「ダメ」「できない」と誰かに話すこともできなかったので、そうなったというのも一因かと思います。家庭的にも大正末生まれの父と昭和一桁生まれの母、明治生まれの祖父母と共に暮らしていましたし、世の中も高度成長期で、期待に応える、成果を上げるということに、大きな価値があった時代でした。いわゆる「いい子」だったと思います。

 社会は、大きく変わりました。新しい教育のあり方を杉並区は考えてきました。新しい教育ビジョンでは、何ができるとか、価値があるとか、そういったことだけを目指して人を育てるのではなく、それぞれの違いを認め合い、学び合い、信頼し合い、共に生きる、誰もが当事者としてということを大切にしたいと言っています。
 私もしあわせ、あなたもしあわせ、みんなしあわせ・・・そんな暮らしを子供園でも創っていきたいと思っています。子どもも教育の当事者として、子ども自身の学びを、友達や周りの大人に分かち合うことを大切にしたいです。そのためにも、一人一人の「なぜ?」「どうして?」「どうなっているの?」という思いから始まる学びを大切にします。ちがいを認め合い、それを分かち合い、共に暮らすことを目指していきます。
 これまで子供園で大切にしてきたことを見直しながら、しあわせを創る土台となる“自分のことが大好きな人”が育つよう支えながら、私も一緒に学んでいきたいと考えています。

 「教育ビジョン2022」は、これまでのような目指す人間像を 定めるのではなく、区民誰もがこれからの時代を自分らしく生きるために必要となる「私たちが大切にしたい教育」を掲げ、その教育を自分ごととして担うための「一人ひとりが教育の当事者として心がける視点」を示しています。
 
*詳しくは、杉並教育振興審議会から示された答申をご覧ください。(以下のアドレスから、ご覧いただけます)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/007/804/toshin210625.pdf

10月   自分 遊び 友達       副園長  原  麻弓

 2学期が始まって1か月が経ちました。それぞれの学年に進級して新しい生活に慣れてきた1学期から、そろそろどの学年でも、友達との関わりに変化の見られる時期です。
 9月下旬。年長組でも、このようなことがありました。
 
 園庭で自分の好きな遊びに取り組む時間。砂場で砂遊びをする子もいれば、コンテナやマットを組み合わせてお家ごっこをする子もいます。そんな中、園庭に描かれたトラックの中では、これからリレーをしようと集まって並び始める子どもたちが数名います。そこから少し離れたところに一人の子(Aさん)が立っていました。
 Aさんは、リレーに集まる友達と、鉄棒辺りにいる友達を、交互に見ています。鉄棒にいる友達数名は、なるほど!これまでAさんがよく一緒に遊んでいる友達です。
 私はこう思いました。
『Aさんはリレーがやりたいのだろう。でもいつも一緒に遊ぶ友達が違うところにいてどうしよう?と思っているのではないか。今までのAさんなら、迷わずいつも一緒の友達のほうを選んでいるだろう。けれど今は、立ち止まって悩んでいる!』
 このあと、どう過ごすかはその子次第です。それでも、自分がやりたいと思ったことに素直に向かってほしい!そこで、Aさんに「何か困っている?」と声を掛けました。Aさんは「…うん。」と言いながら、リレーの友達と鉄棒の友達を見ています。
 「こっちは今からリレーが始まるんだね。あっちには仲良しの友達がいるんだ。もしかして、どっちに行こうか悩んでいる?」と尋ねると、Aさんは「うん。」と答えました。悩む気持ちに共感しながら、「Aさんのやりたいと思うことをすればいいと思うな。(鉄棒の)友達も、後からリレーに入ってくると楽しいね。」と伝えました。
 Aさんの中には、仲良しの友達と違う遊びをすることへの不安があったのだと思います。すると、リレーの準備をしていたBさんが来て、「どうしたの?」と声を掛けてくれました。事情を話すとBさんがぽつり、「リレーやりたいならリレーやったほうが楽しいんじゃない?」と言いました。なんともまっすぐなその言葉に、AさんはBさんと一緒にリレーの仲間に加わっていきました。

 保護者の方から離れて暮らす子供園生活の中で、仲良しの友達がいることは、子どもにとって安心できることの一つです。ですが、時には、その中で悩んだり悲しくなったり傷ついたりすることもあります。子どもたち一人一人の中に、自分のやりたい遊び、好きな遊び、夢中になれることがあれば、そこから友達関係も変わったり広がったり深まったりしていきます。まずは、一人一人の大好きな遊びを見つけること。そして、その中で起こる様々な友達との関わりを職員は丁寧に見ていきます。
 もし気がかりなことや心配なことがあったら、いつでも担任や副担任、職員室の職員にお声掛けください。園での様子、これからのことについて一緒に考えていきましょう!