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令和4年度 園だより
7月 『子供園の特別支援教育とは』 特別支援教育コーディネーター 松田陽
「特別支援教育」や「インクルーシブ教育」、「合理的配慮」あるいは「発達障害」といった言葉が、教育関係者の間だけではなく、一般の方にもよく知れ渡るようになり、保護者の方も耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。杉並区の小中学校では、様々な発達の子どもたちが、自分の活躍できる場を選んで学ぶことができるようにと、様々な取り組みが進められてきました。現在は、従来の養護学校や特別支援学校(学級)の他に、全校に特別支援教室(基本的には通常級に在籍し、授業を受けるが、個々の特性に合わせて部分的に個別又は少人数での取り出し授業を受ける)が設置されるようになりました。
では、子供園での特別支援教育についての考え方や取り組みは?というと、小学校以降とは少し異なります。なぜなら、幼児期は、月齢による育ちの差や家庭経験の違い、なにより、興味関心の向かう先が一人ひとり異なる時期だからです。そのため、子どもたち一人ひとりが特別な、その子に応じた援助が必要な存在だと考えています。その子や、その学級の好きなこと、興味をもっていることに合わせた活動を考え、「やってみたい!」という思いを引き出せるように、日々の教育保育を計画しています。学級の環境の見直しや個別の援助の在り方については、特別支援コーディネーターが中心となって取り組んでいます。
昨年度、本園と就学前教育支援センターが協働で行った研究の中では、どの子も過ごしやすく、主体的に遊びや生活に向かうことができる教材や環境について学びました。
例えば、学級の実態に合わせて、一日の見通しがもちやすいように、日の予定を掲示したり、手順表を用意したりしています。表示に用いるカードは、幼児の視覚情報で捉えやすい絵や写真を中心に、文字も添えています。こういった表示は、全員が“使わなければいけないもの”ではありません。見なくてもいい子は見ずに行ってもいいし、不安になった時だけ確認のために使うこともできます。また、自分だけのカードがあることでやりやすくなる子は、自分のカードを使えるようにしています。それぞれが過ごしやすくなるための教材の使い方をしながら、生活に必要なことを身に付けていかれるようにしています。
物の置場などの表示も同様です。大人に聞かなくても、自然と自分たちで整えることができる環境を大切にしています。後から大人に直されることは、一生懸命片付けた子どもたちにとって、心地の良いことではありません。直さなくても済むような、分かりやすい環境にしていくことは、大人にとっても子どもにとっても幸せな環境と言えるのではないでしょうか。
昨年度の取り組みの様子は、リーフレットにまとめ、区内の各就学前教育施設にも参考資料として配布されました。職員室カウンター横のラックにも、閲覧用を用意していますので、ぜひご覧ください。
一人ひとり、好きなこともあれば苦手なこともあるけれど、子供園の中では「自分でできる」という自信をもって、のびのびと自分の良さを発揮していくことができるように支えていくことが、子供園の“特別支援教育”の大切にしているところです。豊かな体験の先に、たくさんの学びや育ちがあることを願っています。
6月 自然は学びの宝庫 園長 齋藤 由美
成田西子供園が新園舎に移転してから2年半が経ち、園庭の木々や草花も生長をしてきています。
今年の春は、砂場の屋根に藤が紫色の花を咲かせました。サクランボやイチゴも実をつけ赤くなり、収穫して食べることができました。自然の中で育ったサクランボのお味はいかがでしたか?収穫して食べた3歳児が「あ〜、サクランボってこうやって食べるのか・・・。」とつぶやいていました。いつもはスーパーに並んでいますものね。イチゴがなるとまだ白いうちに採ってしまうことが多かったのですが、ジャムにして食べてからは、関心が高まり、毎日少しずつ赤くなっていくのを楽しみにし、赤くなると何人もの子どもたちが、「園長先生、イチゴが赤くなっているよ!」と知らせに来てくれました。また、柚やブルーベリー、ミカンにも花が咲き始めています。わずかに出てきた葉を見つけると、あっという間にちょうちょうが卵を産みにやってきます。サクランボの木の周辺からは、昨年に続きカマキリの赤ちゃんが出てきています。昨年育ったカマキリが卵を産み、かえったのでしょう。人工芝の園庭の中のわずかな土や木々ですが自然の力、生き物の逞しさには驚きと素晴らしさを感じます。
自然に関わる姿は、発達によって違います。ある日年少児が、大事そうに何かを握っています。トイレに行っても手洗いに行っても握ったまま離さずにいるので、手を開いてみるとダンゴムシを持っていました。ダンゴムシを見つけたことが嬉しくて、とてもとても大切にずっと握っていたのです。残念ながら握りすぎてダンゴムシは死んでいました。悲しかったことでしょう。3歳児は、おもしろそうと、生き物に興味関心をもったり親しみを感じたりしますが、まだずっと握っていたらどうなるかというところまでは見通しがもてません。年中の子どもたちは、虫を見つけては、「飼ってみたい」と、飼育ケースに砂や木の実、葉っぱなどを入れ、年長さんのしている姿をまねながら自分たちで準備している姿が見られます。年長の子どもたちは、生き物を見つけると「この生き物の名前は?」「何を食べるのだろう?」「どうしたら飼育できるのか?」など、図鑑で調べたり、今までの経験をもとに、友達や先生と考え合ったりしています。同じ生き物に触れる中でも学びは発達によって違います。時には生き物が死んでしまうこともあるかもしれません。しかし、子どもたち自身が自分で試行錯誤しながら体験していくことで、より生き物への接し方や命あるものとしていたわり、大切にしようとする気持ちをもって関わることができるようになっていくのではないかと思います。
自然は学びの宝庫です。子どもたちが、「やってみたい。」「おもしろい。」「不思議だな。」「たくさん集めたい。」「調べてみよう。」など自分から主体的に環境に関わり、興味、関心をもってワクワクドキドキし心を動かしながら遊べるような環境作りを工夫していきます。今年は、生き物の集まる場作り(プランターやビオトープ)、観察できる環境作りに取り組みます。そして、発達に合わせて、じっくり見たり、触れたり、繰り返し取り組んだり、考えたり工夫したり、調べたりしながら夢中になって遊び込む中で、豊かな感情や好奇心、思考力、表現力を育てていきたいと思います。
各学級で様々な夏野菜も育て始めています。これから野菜の生長の変化も見られることでしょう。親子で生き物や自然に触れたりし、発見や気づきを楽しんでみてください。