2016年11月
2016年10月31日
本に没頭する経験を
副校長 紺谷 祥一
この季節になると、「灯火親しむの候」という時候の挨拶で始まる手紙や通知文がよく届きます。この三月まで常夏の国インドネシアにいた私にとって日本の秋は四年振りですが、寒さが身に応える一方で、秋の美味しい味覚を享受しているところ。とてもしみじみとした気持ちで、そんな文書を読み始めます。
学校ではこの頃、読書を奨励します。読書は個人的な営みかもしれませんが、永福小では20分間の中間休みや昼休みに図書館を開放して本に親しむ時間も設定しています。外で元気に遊ぶ子も多い中、図書館にやってくる子どもまた多くいます。また、毎週火曜日の朝には「読み聞かせ」として、保護者の方の精力的なボランティアによって運営がなされています。こんなことを書くと、先生方に叱られるかもしれませんが、「読み聞かせ」の時間における子どもたちの本への食い入るようなその眼差しは、平素の授業中のそれとは比較にならないほど集中しています。子どもたちが本の世界にすっかり引き込まれている姿があるのです。
先日、こんなことがありました。学校司書の山野先生に代わって図書館で返却と貸し出しの手伝いをしていた時です。昼休みの終了を告げるチャイムが鳴ると、私が何も言わないのに、子どもたちはサッと本を元に戻し、各自の教室に足早に向かいます。永福小の子どもたちはみんな何て良い子たちなのだろう、と深く感心していると一人ぽつんと座って本を読み続けている子どもがいます。『おいおい、時間だよ!』と、声をかけても返事をしません。横まで行って話しかけてもまだ反応がありません。私は心配になり、しゃがんで顔を覗き込んだ瞬間、その子はびっくりした様子を見せ、周りに誰もいないことにやっと気がつきました。その子は本に集中し、その世界に没頭していたのです。
こういった本の世界に没頭する体験を、より多くの児童にも味わわせたいものです。全国学校図書館協議会の調査によれば、2015年五月の一ヶ月間の平均読書冊数は、小学生は11.2冊、中学生は4.0冊、高校生は1.5冊とのこと。一方、この間に読んだ本が0冊の児童生徒は「不読者」と呼ばれるのですが、同調査の結果では、不読者の割合は、小学生は4.8%、中学生は13.4%、高校生は51.9%となっています。学年が高くなるほど、読書をしない傾向があることが分かります。冊数についてこだわる必要はないと思います。しかしながら、読書は豊かな感性と考える力を育み、人生をより深く、そして豊かに生きていくために欠かせないものであり、学力の向上等の教育的効果が期待されると言われています。本校としても、児童たちに強制するのではなく、本の世界を知り、自主的に楽しく親しみ、本を読む習慣を身につけさせたいと考えています。ご家庭におかれましても図書館の利用をはじめとして、積極的に読書を奨励していただき、子どもたちが生涯に渡り永く本に親しめるよう、支援して欲しいと感じます。この秋、親子で読書する時間を作ってみてはいかがでしょう。良い本に出逢ったら、是非私にも教えてください。
2016年10月
2016年9月30日
さまざまな違いをもった子どもたちが同じ空間で学ぶこと
副校長 紺谷 祥一
毎年の暮に保護者の皆様にご協力をお願いしている「学校評価」の中で、「永福小学校は特別支援教育や発達障害を理解するための情報提供が十分になされているか」という質問があります。昨年度は37%の保護者の方が「肯定」・「やや肯定」と回答され、「否定」・「やや否定」・「どちらとも言えない」の回答は63%に昇りました。
平成19年4 月から学校教育法の一部改正によって、それまでの「特殊教育」から「特別支援教育」に変わり、すべての幼稚園や学校において障害のある子どもの支援を充実していくことになりました。「特別支援教育」の理念の背景は、「障害のある幼児・児童・生徒への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつさまざまな人々が生き生きと活躍できる社会の形成の基礎となる」という、共生社会の実現を目指したものです。その後、10年弱の時間の中で、今日まで具体的な整備がなされており、今年度の4月にはいわゆる「障害者差別解消法」も制定されました。なお、杉並区立の小学校でも、今年度より順次特別支援教室が設置されつつあり、永福小学校には平成30年度に開設される予定です。この趨勢は、インクルーシブ(包括)教育とも言われます。
本校では一人一人を大切にすることを是とし、日々職員は一丸となって教育活動に専念しています。それでも、学校には友だちと仲良くするのが苦手で「居場所がない」と感じたり、時に感情を上手にコントロールすることができなくなったり、授業中に外に出てしまったりする子どももいます。(実は誰でもそんな時はあるものではないでしょうか?)この言葉は教育界ではすっかり定着しているのですが、“「困った子」ではなく、「困っている子」”がいます。今日、学校には通例、校務分掌の一つに特別支援教育コーディネーターを配します。本校では今年度は神田教諭を任命しています。人権に配慮すべき事柄も多いことから、「十分な情報提供」ができていない側面もありますが、子どもとしっかり向き合うことはもちろん、職員の校内外での研修会の参加をはじめ、区内外の関係機関との連携、当該の保護者の方との丁寧な連絡等を学校として心がけています。また、スクールカウンセラーの日塔先生は毎週木曜が勤務日に当たりますが、朝から夜まで、子どもたちや保護者の皆様からの相談対応に追われ、本校の相談室の稼働率は非常に高いと言えます。特別支援教育コーディネーターはそのリーダーとして奔走しています。
インクルーシブ教育とは、誰をも排除しない教育です。得意や苦手があっても、違いによって分けない教育です。さまざまな違いをもった子どもたちが同じ空間で学ぶことの意義を大切にします。学校で発生する問題や課題の原因を当該の子どもの側に求めるのではなく、学校側(カリュキュラムや指導方法等)の問題としても捉え、その解決に取り組む教育とも解しています。つまり、学校・学級は今や街や社会と同じ構造です。そこで、大切になるのが、子ども同士、保護者同士、また、教師との「関係性」です。そして、良好な関係性を維持する上で更に重要なのがコミュニケーションだと思います。本校では、今学期特に言葉をしっかり紡ぐことに力点を置いた指導を展開しています。本紙前回号の校長による巻頭言にもありましたが、確実に伝え、正確に受け取るスキルを高めることが肝要です。また、たとえ、それが未熟な表現でも、「どんな気持ちなのかな」とか「こんなことを伝えたいのかな」と、柔軟に思いめぐらせること、本当に優しい気持ちを発揮できること、それらもまたコミュニケーションの力なのかも知れません。特別支援教育や発達障害を理解することは、何も特別なことではありません。さまざまな個性ある子どもと共に学ぶ機会を通じ、互いに子どもたちが心を耕し、豊かに成長することを目指します。子ども同士のトラブルなどでは、すぐに解決できなかったり、なかなか至らず学校の対応に十分なご理解が得られなかったりする場面もあるやも知れません。そんな時こそ、また遠慮なくご相談いただければ幸甚です。引き続き何卒宜しくお願い致します。
2016年6月
2016年5月31日
8.78人
副校長 紺谷 祥一
永福小学校に副校長として着任して早、二ヶ月が経ちました。入学式、始業式が済むと、早速授業が始まりました。するとどうでしょう、初めてお会いする先生が職員室にどんどんやって来て、私と初対面のご挨拶を交わします。『お名前とお顔を覚えるのは大変。これはどうしたものか。一体この学校には何人の先生がいらっしゃるのか…』、と当初はとても困惑しました。常勤の教員の他に、非常勤講師、図書館司書、学級支援員、学習支援教員、理科支援員、英語補助指導員、介助ボランティア、学校サポーター、学生ボランティア… これらの役職は区の手厚い施策によって本校に派遣されている、子どもたちにとっての「先生」だったのです。
また、「先生」とは普段呼ばれなくても、子どもたちのことをよく知っているスタッフが非常に多いのも永福小の自慢です。毎朝正門で立って安全を守ってくださる警備員さんは、驚くほど子どもたちや地域のことをご存じで、私はたいへん勉強になります。「○○くん、ポケットから手を出して歩かないとまた(・・)怪我をするよ!」、「今、犬を連れていた方は永福小の卒業生で、地域で困った時は何でも相談するといいですよ。」という感じです。何とこの警備さんの胸のポケットには、職員の顔写真の貼られたノートが入っていて、気がかりなことがあった時には連絡をしてくれるのです。更に、安全と安心な給食を提供している給食調理を担当される栄養士さんを含めた8名のスタッフや、教育活動に必要な備品購入や契約を進める3名の事務職員さん、はたまた、いつも細やかに環境を整備してくれる3名の用務主事さんも、気さくに子どもたちに声をかけ、良好な関係が築かれています。
標題の8.78人とは、そんな本校のスタッフ総勢64名で児童数を割った際の数字です。スタッフ一人当たり、8.78名の児童を見守っていることになります。一概に比較にはなりませんが、全国の小学校の常勤教師一人当たりの児童数の平均は17名程度ですから、スタッフの多い永福小はスケールメリットが大きいと感じます。64名には含めていない、学校運営協議会の10名の皆様をはじめ、朝夕の辻に立って見守って下さる15名の交通安全指導員さんや2名の校庭開放員さん、3名の夜間警備員さん、そして、毎日たくさん学校に足を運んでいただいているPTAの皆様を含めれば、標題の数字はもっともっと小さくなっていることに気がつきます。
学校目標 ― 地域と共に創る学校を目指して やさしく つよく ―
皆様の温かい眼差しに心から感謝申し上げます。
2015年11月
2015年11月30日
「自ら考え 表現し 高め合う子の育成~ICTの活用を通して~」
研究主任 森 麻美
本年度本校では、「自ら考え 表現し 高め合う子の育成~ICTの活用を通して~」をテーマに、各学年が目指す児童像にせまるための手段として、それぞれの教科でICT機器を活用した授業を研究しています。
授業におけるICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)活用とは、電子黒板、プロジェクタ、実物投影機、パソコンなどを利用することです。
それでは各学年の授業について、ご報告いたします。
【2年 生活科 「わたしのまちはっけん~もっと知りたい町のこと~」】
バス車庫見学に向け、バスに関係する静止画や動画を見て、知りたいことを考えるという授業を行いました。タブレットパソコンを利用したことで、静止画を拡大して細部の様子を見たり、動画で動く様子を見たりすることができ、自分が知りたいことを積極的に考えることができました。
【3年 社会科 「わたしのくらしと商店」】
スーパーマーケット見学と商店街での専門店見学の体験をもとに、必要なものをどこで買うかを話し合い、お客さんが用途に応じて店を使い分けて生活していることに気づくという授業を行いました。タブレットパソコンを利用して商店街見学の際に自分達が撮影した写真を見ることで、見学時に学んだことを思い出し、グループでの話し合いが活発になり、自分の考えを深めることができました。
【4年 国語科「調べたことを整理し、発表しよう『だれもが関わり合えるように』」】
「だれもがよりよく関わり合うためのもの」をテーマに自分で調べたことを相手に伝わるように発表するための練習をするという授業を行いました。グループごとに、一人ずつ発表練習をタブレットパソコンで撮影し、その動画を見ながら良い発表をするための工夫について話し合いました。発表している自分の姿を見ながら、発表時の自分のめあてを振り返ることができました。
【5年 社会科 「わたしたちの生活と食料生産『米づくりのさかんな地域-山形県庄内平野-』」】
庄内平野の資料から、人々が米づくりに力を入れていることに気付き、学習問題をつくり、学習計画を立てるという授業を行いました。グループで話し合う際に、タブレットパソコンを利用して資料を見ながら話し合うことで、詳しく資料を読み取ることができ、また自分の考えをもつことができました。
【4年 音楽科 「リズムを重ね合わせてアンサンブルをつくろう」】
パソコンで、一人1拍ずつ音符を選択し、スクリーンに映った4小節分のリズム譜を見ながら、みんなでリズム打ちをするという授業を行いました。パソコンのキーを押すだけで簡単に音符が変わるので、いろいろと試しながら一人一人が主体的に活動することができました。またパソコンの画面をスクリーンに表示することで、みんなでつくったリズムを瞬時に共有し、楽しむことができました。
今後、6年生と1年生の研究授業が行われます。授業の様子は、校内研究だよりにて、お知らせいたしますのでご覧ください。
昨年度に引き続き、授業の中で積極的にICTの活用を行っているため、児童はデジタルカメラやタブレットパソコンなどのICT機器をスムーズに操作し、学習に役立てています。
ICT機器を使用することが目的なのではなく、児童の感心・意欲を高め、主体的な取り組みを促すための手段として、ICTを活用することで、「自ら考え 表現し 高め合う子」を目指します。
2015年10月
2015年10月30日
「キャリア教育」
副校長 竪山 浩人
厚生労働省の統計によると就職して3年以内の離職率は中学卒が約65%、高校卒が約40%、大学卒が約32%だそうです。また、ニート状態の若者(15歳以上から34歳の非労働力人者(15歳から34歳の男性または未婚の女性(学生を除く)でパートアルバイトをして働く者またはこれを希望する者)が176万人だそうです。これらの数字は一時期よりも若干少なくなってはきたものもありますが、ほとんど減少が見られないものもあり依然として深刻です。
このような状況の中、国では子どもたちが将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら自分らしい生き方を実現するため「キャリア教育」を推進しています。小学校においては「自己及び他者への積極的関心の形成・発展」「身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上」や「夢や希望、憧れる自己のイメージの獲得」「勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の育成」を目標として掲げています。
何だか難しそうですが「働くことって素晴らしいことなんだなあ。将来こんな職業につきたいなあ、じゃあ頑張ってみよう。」と考えられる子どもになってもらえればということです。
本校では10月20日から22日の3日間、4年生が商店街の花屋さん酒屋さん、ドラッグストアや不動産屋さん、スーパーなどで仕事を体験する「弟子入り体験」を行いました。また、10月25日の永福町商店街のオータムフェスティバルには5年生が参加し、自分たちが育てた花等を販売させていただきました。5年生は永福町商店街の方にお願いして毎年安曇野から稲を送ってきていただいています。今年はオータムフェスティバルで安曇野のわらでしめ縄を作成し販売しました。
今後も6年生が仕事のやりがいや苦労などをインタビューする「お仕事博覧会」を学校支援本部の力をお借りして実施する予定です。
「弟子入り体験」や「オータムフェスティバル」では地域の皆様のご協力によって子どもたちは働くことの意味や大切さを身をもって感じることができました。勤労体験だけではなく、地域の方々とかかわることによって、新たなつながりができ、地域の一員としてしての自分を考えることができるようになっていくきっかけの一つになったでしょう。
今後も地域の方々の力をお借りして学校と力を合わせて地域の子どもたちを共に育てていく。そんな学校であり続けたいと考えています。改めて今回お世話になった永福町商店街の皆様と西永福協栄会の皆様に感謝いたします。
2015年9月
2015年5月29日
「杉並区「特定の課題に対する調査」の結果について」
副校長 竪山 浩人
5月に実施致しました杉並区の「特定課題に対する調査」の結果をお知らせ致します。
「特定の課題に対する調査」(表1)では全ての項目で、区の平均を上回っています。特に算数の「応用」や「数学的な考え方」は区の平均を大きく上回っています。下位児童及び上位児童の割合の変化(表2)では算数では全学年で平成26年度から下位層の児童の割合が減少し、上位層の児童の割合が増加しています。これは少人数指導でより個に応じた学習に取り組んだ成果だと考えます。
課題は国語「基礎」及び「学んだ力」の正答率が他の項目と比較すると若干低い傾向があることです。本校ではこれらの結果を踏まえ、基礎基本をしっかりと定着させて参ります。また、指導法の研修を重ね、さらなる学力向上を目指していきたいと考えています。
今回のような学力調査では学力のごく一部しか測定することはできません。また、人とのコミュニケーションをとる力や周囲の友達を思いやる力などは学力調査では分かりません。永福小学校では今回のような見える学力とともに、社会性を培っていくために必要な見えない力も共に育てていきたいと考えています。
2015年7月
2015年7月17日
「安全で充実した夏休みを!」
生活指導主任 我那覇美智子
「夏休みは、おじいちゃん、おばあちゃんちに行くよ」「海でいっぱい泳ぐんだ」「習い事や塾が多いよ」「特に予定ないなぁ」「宿題に追われるかな・・」それでもやっぱり夏休みは、子どもたちにとって嬉しいものです。学校生活では味わえないたくさんの体験をしてほしいと思います。どうぞ、健康に気を付けて有意義な夏休みをお過ごしください。
交通事故に気を付けましょう
子どもを巻き込んだ交通事故が増加しています。特に自転車による事故は、年々増加の傾向にあり、子どもが被害者になるだけでなく加害者となる事例もあります。曲がり角での自転車と自転車の衝突、自転車と車、歩行者との接触などがあり重大事故につながります。自転車は、幼児からお年寄りまで手軽に利用できる便利な乗り物ですが、車両と同じです。くれぐれも交通ルールを守り安全に過ごしましょう。
<自転車に乗るときの約束>
・乗る前に点検や整備をする。
・自転車は二人乗り、横に並んで走るのは禁止。
・必ずヘルメットをかぶる。
・十字路では、必ず一時停止をする。
・点字ブロックの上に自転車を止めない。
誘拐や痴漢に気を付けましょう
連れ去り、声掛け、露出・・残念ながら不審者情報は後を絶ちません。夏休みは、外出する機会が増えますので、子どもたちが被害に遭わないように、一人での外出はできるだけ避け、公園や暗い道、人通りのない道は通らないなど、日頃から話し合い確認しましょう。また、繁華街など大勢の人がいるところは、まわりに無関心なことが多く、かえって危険な場合があります。子どもだけで繁華街に行くことは避けましょう。
規則正しい生活をしましょう
一学期は、多くの子どもたちが体調不良を訴えて保健室に来ました。主な原因として「睡眠不足」「朝食抜き」が挙げられます。朝食抜きや睡眠不足は、頭痛、腹痛、無気力、気だるさ、イライラ感を招き、ときには精神的なストレスになり、集中力を欠いたり、思わぬトラブルやケガをしたりすることもあります。成長期の子どもにとって「食べる」「遊ぶ」「眠る」はもっとも大切なことです。夏休みこそ、生活習慣を見直すチャンスです。バランスのとれた食事、十分な睡眠(早ね早起き)で体も心もすっきりする心地良さを味わわせ、二学期への「やる気」につなげてほしいと思います。
大きく成長し笑顔で元気いっぱいの子どもたちに会えるのを楽しみにしています。
2015年5月
2015年5月29日
「弓ヶ浜移動教室」
副校長 竪山 浩人
先日弓ヶ浜移動教室に行きました。当初は台風6号が接近していたので天候がとても気になっていましたが、子供たちの日頃の心がけが素晴らしかったためか、それとも担任の執念が勝ったのか、台風一過のさわやかな天候の中で全行程を予定通り実施することができました。
行きの東名自動車道路では、眼前に富士山がくっきりと大きく見えた時や海岸線で美しい伊豆の海が見えた時は子ども達の歓声があがりました。幸先のよいスタートが切れてよかったと思っていましたが、本当にその通りの3日間になりました。
2泊3日の行程の中にはたくさんの取組がありましたが、多くの子ども達が楽しかったものとして、磯観察を挙げていました。
子どもたちは海の生き物に触れることに抵抗を感じている様子はあまりありませんでした。磯観察ではカニや小魚、そしてウニ等を目を輝かせながら探していました。またガイドさんから10回の活動で1回しか見つからないと言われていたタコを見つけた子どもの嬉しそうな表情は忘れられません。
磯観察が終わった後、山歩きをしてサンドスキー場に向かいました。長い時間歩き子ども達も多少疲れていましたが、伊豆の美しい海岸の景色を目の当たりにした時には疲れもどこかへ吹き飛ぶように思えました。
そして、サンドスキー場に到着しました。ボードを持ちながら砂の急な傾斜を何度も登るのは大変でしたが、潮風を受けながら滑るのは何とも気持ちがよいものでした
東京では経験できない伊豆の自然の中での活動は子ども達にとって学校の中だけでは味わうことのできない貴重な体験でした。
それから私が6年生の行動で感激したことがあります。それは6年生の多くの友達がみんなで楽しもうとする姿勢が見られたことです。
例えば、2日目に室内レクがありましたが、自分一人や自分の周りの友達だけが楽しむのではなく、クラスのみんなで楽しみたい。学年みんなで楽しみたい。こんな声が聞こえてきました。
これは今までクラスの中で6年生が自分だけでなく、周りの友達のことを常に思いやってきたからこそ、こんな言葉がでてきたのでしょう。自分さえよければよいという風潮がどこか感じられる今、6年生の姿に心が温かくなりました。
共同生活を友達と一緒に過ごすことによってクラスや学年の一体感をより味わうことができ、友達との心の距離もぐっと近づいた時間でした。
また、本物の自然に触れ合うことができた時間にもなりました。そして6年生の心の成長を感じられた素晴らしい時間を過ごすことができた時間だったと思います。
2014年11月
2014年11月1日
「かかわりを広げよう」
副校長 竪山 浩人
厚生労働省の調査によるよると、高校、大学の卒業3年後の離職率はそれぞれ、39.2/%、31.0%(いずれも平成22年3月卒業者)です。また、若年無業者(ニート)の状態にある若者(15歳から34歳の非労働力人口の内、通学、家事を行っていない者)の数は現在も60万人以上だそうです。
「社会的に自立ができない」「職業意識・職業観の未熟さ」やコミュニケーション能力等職業人としての基本的な能力の低下は「社会的・職業的自立」に向けて、現在の子どもたちの大きな課題となっています。
例えば、就職すると自分と価値観の違う同僚や自分の両親世代の上司や年の離れた先輩などと一緒に仕事を進めていくことも多いでしょう。しかし小学校、中学校そして高校・大学の間ずっと自分と同じ感覚の仲良しの友達だけと付き合い、自分にとって居心地がよい狭い世界だけしか経験したことのない人達は先輩や同僚とどのようにして付き合っていかなければならないのかが分からなくなることは想像に難くありません。
また、ニートと言われている人達が一度も就職活動を行っていない理由は「人との付き合いなど社会生活をやっていける自信がないから」というのがトップの理由となっていることからも幼少期から様々な人とかかわりをもっていくことは非常に重要なことだと考えます。
本校では「たてわり班活動」を年に7回設定し、異なった年齢の児童同士で交流する機会を設定しています。また、小学校でのクラブ活動やPTAの活動や地域行事等も異年齢の子どもたちや地域の大人と子どもたちがかかわり、学んでいく場となるでしょう。そして、本校が特色として取り組んでいる「花いっぱい運動」も地域の方と児童がかかわるよい機会になっていると思います。10月26日に永福商店街で行われたオータムフェスティバルでも5年生が見知らぬ大人がいる中で一生懸命に大きな声で宣伝を行ったり、笑顔でお客さんに、育てた花などを販売したりしている姿を見ることができました。
クラスの中でも気が合う友達ばかりではなく、何となく馬が合わない友達や全く価値観が合わない友達もいるかもしれません。しかし、そのような人達を拒否するのではなく、理解しようとし、どのように接すればよいのか、また場合によってはどのくらい距離を取ればよいのかなどを日常の生活の中で学んでいくことも大事でしょう。
少子化や核家族化が進み、テレビゲームがどこの家にもある今の時代は、昔と比べると異なる世代や異なる価値観をもった人とじかに接することがずいぶん少なくなりました。様々な世代の人と交流し、様々な価値観をもった人とかかわりをもつことによって、自分自身を広げていくことはこれからの子どもたちにとって非常に大切な素養になっていくのだと感じています。
2014年10月
2014年10月1日
失敗したその後・・
副校長 竪山 浩人
少し前、テレビニュースの中で、抜け道になっている地方の小学校の通学路の危険性についてのリポートを見る機会がありました。その時間帯は、車は進入禁止になっているにもかかわらず多くの車が小学校のそばの道を通行するためとても危険な状態になっていました。そこで、番組のレポーターが運転に「この道路は今の時間帯は進入禁止になっています。スクールゾーンになっているので通ってはいけないはずですが」と注意をするのです。するとドライバーからは多くの反応が返ってきます。一番多かったのは「へえ、そうだったんですか。知らなかったなあ」という返事。入り口にはもちろん標識もあって、道路にもこの時間帯は進入禁止と書いてあり、さらに車の進入禁止の看板が大きく掲げられているにもかかわらずです。また、「お前に何か関係あるの」と開き直るドライバー、ひどいドライバーになると質問されても一切無視して、レポーターに「バーカ」という言葉を浴びせかけ、急発進で逃げていくのです。何ともやるせない気持ちになってしまいました。「すみません。急いでいたので、申し訳ありません」と謝ることができたのは全体の4分の1くらいでした。インタビューを受けたドライバーにも多分、言い分はあるでしょう。しかし、この番組の多くのドライバーのようにしらばっくれたり、開き直ったり、言い訳を聞くのは非常に聞き苦しいものでした。
ここで取材されたドライバーのほとんどの人達は自分自身が間違っていることを自覚しているはずだと思います。しかし、多くの人達は間違った行動をとってしまった時でもきちんとした態度で謝罪する事ができていません。自分自身の非を素直に受け入れることは難しいことなのだと改めて思います。
同様に最近の子どもたちも昔と比較すると、大人に叱られることが減ったせいか、間違った行動をしてしまった時も素直に謝ることができなくなったと感じることがあります。
ごまかそうとしたり、開き直ったり、他人のせいにしたりと、なかなか自分自身の行動への反省に結びつかないケースが増えてきている気がします。
私が子どもの頃は間違った行動をとった時はしっかり謝るということを親や先生からよく言われました。そして、言い訳をしたり、開き直ったりした態度は間違った行動をしたと同じかそれ以上に厳しく注意されたものでした。
小学校時代の担任からは、「どんな人間も間違いは犯す。問題は失敗したそのあとにどんな行動をとるかが一等大事なんだ」と、言い訳ばかりしていた私はよく注意されていました。また、「 言い訳やごまかしばかりやっている子どもは、失敗しても言い訳ばかり上達して、本来改めるべき自分の行動を改めない。そして、大人になって言い訳やごまかしの達人になってしまう」と言われていたことも思い出します。
私の恩師から教えてもらったことが40年近く経った今でも多くの子どもたちにとって課題になっていると感じています。我々大人は、子どもが間違った行動をとってしまった時、どのように振る舞い、行動すべきかをしっかりと教えていかなければならないでしょう。
2014年7月
2014年7月18日
充実した夏休みを!
生活指導主任 我那覇 美智子
子どもたちが待っていた夏休みです。それぞれのご家庭で素敵な計画を立てていることでしょう。
夏休みは体験的な活動に取り組むよい機会です。子どもたちの好奇心をくすぐるような素材は身近にあふれていますので、ご家族の方が一緒に発見、体験をされてはどうでしょうか。子どもにとって、家族みんなが笑顔で過ごせる時間が何より嬉しく大切なものです。家族と一緒に発見したり体験したりすることは、喜びや感動を共有することにつながり、豊かな心を育てます。そして、忘れることのできない貴重な思い出になることでしょう。どうぞ、有意義な夏休みをお過ごしください。
「睡眠」は十分に
一学期、多くの子どもたちが体調不良を訴えて保健室に来ました。その原因の一つに「睡眠不足」が挙げられます。学習中に睡魔に襲われ、自分ではどうにもコントロールできなくて、午前中保健室で熟睡してしまう子が何人もいました。睡眠不足は、眠気ばかりでなく、頭痛、気だるさ、無気力感、イライラ感を招きます。そしてそれらは、精神的なストレスになり、思わぬけがをしたり、学習に集中できなかったり、友だちとのトラブルの原因となることもあります。
成長期の子どもにとって「食べる」「遊ぶ」「眠る」ことはもっとも大切なことです。特に最近は、「食」「遊び(運動)」は積極的に取り上げられ、社会の関心も高くなっています。しかし「睡眠」はどうでしょうか。大人も子どもも忙しくなり、自分のノルマを果たすためには、睡眠時間を削るしかない状況にある子どもがいます。慢性的な睡眠不足を「普通の状態」と捉えている子どもがいることがとても気になります。
以前は「寝る子は育つ」と言われ、夜更かしをすると親に叱られたものです。今は、社会そのものが夜型傾向にあるため、なかなか叶わない面もありますが、人間は眠らないと生命を維持できない生き物です。睡眠の役割として、脳や神経、体の各器官、筋肉などの疲れをとる。知識や記憶を整理する。心を安定させる。成長ホルモンが分泌され骨などが成長する。次の日のやる気を起こすなどがあります。このことからも、やはり「寝る子は育つ」のです。
夏休みこそ、生活習慣を見直すチャンスです。しっかり睡眠をとり体も心もすっきりする「心地良さ」を味わわせ、二学期への「やる気」につなげてほしいと思います。大きく成長し、笑顔で元気いっぱいの子どもたちに会えることを楽しみにしています。
2014年6月
2014年5月30日
より良い習慣を
副校長 竪山 浩人
これは東欧を訪れたことがあるお年寄りの話です。混雑した地下鉄に乗り込んだ時に目の前の座席に小学生くらいの男の子とお父さんが座っていたそうです。すると、その男の子は座席をスッと立ち、席を譲ってくれたそうです。お父さんが子どもに席を譲るように促したわけではありません。お父さんも席を譲った息子を特に褒める様子もなく、当たり前のような顔をしています。子どもも特に立派な行いをしたという様子はありません。
あまりにも自然な行動に日本から来たおのお年寄りは感動し、どうしてこのような行動ができるのかを考えたそうです。
おそらく、この国ではお年寄りに若者が席を譲るという行為が「習慣」として身に付いているのでしょう。ですから、この東欧の子どもは特別なことをしたということではなく、
いつも行っている行動を普段通りに行っただけなのかもしれません。
このようによい習慣を身に付けていくことはとても大切です。食後、歯をいつも磨いている人は歯を磨かないと気持ち悪くて仕方がないでしょうし、朝顔を洗っている人は、洗顔をしないと嫌な気持ちで一日をスタートすることになってしまうでしょう。あいさつが習慣になっている人は特に意識しなくても自然にあいさつの言葉が出てくるし、身についていない人はなかなか自分からあいさつができないでしょう。
逆に家庭で学習する習慣がない人は家で机に向かうことが苦痛で仕方ないはずです。
このことは私自身、身をもって体験しているのでよく分かります。また、テスト等で見直しの習慣がない人はテストが大切だと分かっていても見直すという作業はしんどいと思います。
学齢期の子どもにとって基本的な生活習慣や学習習慣を身に付けていくことは特に重要です。おそらくよい教育というのはよい習慣をしっかりと身に付けていくことなのかもしれません。
ヤンキースで活躍していた松井秀樹選手は「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる。」と言う言葉を座右の銘としていたそうです。
よい習慣は毎日の積み重ねによって身に付いてきます。主に学校の中で身に付けていく習慣もあれば家庭でなければ身に付かない習慣もあります。学習習慣や基本的な生活習慣だけでなく、自然に仲間のことも思いやるというような心の中の習慣も含めて、永福小学校の子どもたちには小学校時代に身に付けていかなかればならないよい習慣をたくさん身に付けていってほしいと考えています。