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LinkIcon2016年10月31日

本に没頭する経験を

副校長  紺谷 祥一

この季節になると、「灯火親しむの候」という時候の挨拶で始まる手紙や通知文がよく届きます。この三月まで常夏の国インドネシアにいた私にとって日本の秋は四年振りですが、寒さが身に応える一方で、秋の美味しい味覚を享受しているところ。とてもしみじみとした気持ちで、そんな文書を読み始めます。
学校ではこの頃、読書を奨励します。読書は個人的な営みかもしれませんが、永福小では20分間の中間休みや昼休みに図書館を開放して本に親しむ時間も設定しています。外で元気に遊ぶ子も多い中、図書館にやってくる子どもまた多くいます。また、毎週火曜日の朝には「読み聞かせ」として、保護者の方の精力的なボランティアによって運営がなされています。こんなことを書くと、先生方に叱られるかもしれませんが、「読み聞かせ」の時間における子どもたちの本への食い入るようなその眼差しは、平素の授業中のそれとは比較にならないほど集中しています。子どもたちが本の世界にすっかり引き込まれている姿があるのです。
 先日、こんなことがありました。学校司書の山野先生に代わって図書館で返却と貸し出しの手伝いをしていた時です。昼休みの終了を告げるチャイムが鳴ると、私が何も言わないのに、子どもたちはサッと本を元に戻し、各自の教室に足早に向かいます。永福小の子どもたちはみんな何て良い子たちなのだろう、と深く感心していると一人ぽつんと座って本を読み続けている子どもがいます。『おいおい、時間だよ!』と、声をかけても返事をしません。横まで行って話しかけてもまだ反応がありません。私は心配になり、しゃがんで顔を覗き込んだ瞬間、その子はびっくりした様子を見せ、周りに誰もいないことにやっと気がつきました。その子は本に集中し、その世界に没頭していたのです。
こういった本の世界に没頭する体験を、より多くの児童にも味わわせたいものです。全国学校図書館協議会の調査によれば、2015年五月の一ヶ月間の平均読書冊数は、小学生は11.2冊、中学生は4.0冊、高校生は1.5冊とのこと。一方、この間に読んだ本が0冊の児童生徒は「不読者」と呼ばれるのですが、同調査の結果では、不読者の割合は、小学生は4.8%、中学生は13.4%、高校生は51.9%となっています。学年が高くなるほど、読書をしない傾向があることが分かります。冊数についてこだわる必要はないと思います。しかしながら、読書は豊かな感性と考える力を育み、人生をより深く、そして豊かに生きていくために欠かせないものであり、学力の向上等の教育的効果が期待されると言われています。本校としても、児童たちに強制するのではなく、本の世界を知り、自主的に楽しく親しみ、本を読む習慣を身につけさせたいと考えています。ご家庭におかれましても図書館の利用をはじめとして、積極的に読書を奨励していただき、子どもたちが生涯に渡り永く本に親しめるよう、支援して欲しいと感じます。この秋、親子で読書する時間を作ってみてはいかがでしょう。良い本に出逢ったら、是非私にも教えてください。