令和6年度 園だより

7月『子供園の特別支援教育』 特別支援教育コーディネーター 副園長 大塚玲華

先日、園庭にプールが組み立てられました。プールに入る日や、水遊びをすることをとても楽しみにしている子どもたちの姿が見られています。
さて、楽しみにしているプールや水遊びをするためには「水着に着替える」という準備があります。「水着に着替える」という一言の中には、様々な手順があります。細かく見ていくと、「着替える前に排泄を済ませる」→「上履きと靴下を脱ぐ」→「ズボンや下着を脱ぐ」→「水着を穿く」→「Tシャツなどを脱ぐ」→「(女児は)水着を上まで着る」→「水泳帽を被る」→「脱いで裏返った洋服を直し、畳む」…と、プールまでの道のりは遠いです!
子供園では、学級や一人ひとりの実態に応じて、個別に、または絵などの表示を示しながら、言葉で知らせながら…など様々な方法で、子どもたちが「自分でできた!」を感じながら、自分からわかって取り組むことができる工夫をしています。

これらの環境の工夫や関わり方の配慮は、プールの着替えだけではなく、朝の身支度や、片付けなど、子供園の生活の様々な場面で行われています。どの子も「自分でわかってできた!」気持ちをもち、経験を積み重ねることを子供園では大切にしているからです。このように、子ども一人ひとりの姿に合わせて環境を工夫したり、関わり方を考えたりしていくことを「特別支援教育」と捉えています。

特別支援教育は、発達障害と言われるような子どもたちだけに行われるものではありません。子どもたちは一人ひとり顔が違うように、得意なこと、苦手なこと、好きなことなど違います。プールの着替えの場面で言えば、言葉での説明の方が理解しやすい子、視覚的な表示の方が理解しやすい子、今することだけが表示されていた方が集中できる子、一連の流れがわかり、見通しがもてた方が行動しやすい子など様々です。一人として同じ子はいません。そしてこれらの違いも「自分らしさ」だと考えます。

この「自分らしさ(その子らしさ)」を特別支援教育コーディーネーター(今年度は副園長)を中心に捉え、学級やその子に合った環境や関わりをどのように工夫すればよいかを、保育者同士で適宜話し合い、教育保育に反映しています。「苦手なことを無理やりできるように変えるのではなく、変わるべきなのは、その子を取り巻く環境であり、結果として、子どもが自然にわかり行動できることを大切にしよう!」と話し合いと実践を重ねています。
そして、杉並区の教育ビジョンに「多様化する社会の中で、誰もが自分の個性を大切にし、自分らしく生きるためには、他者を固有の尊厳を持つ存在として互いに尊重し合うことが必要です。共に生きる他者の個性に気付く完成を養い、人々の多様性を知り、自分とのちがいを認め合う関係をつくることで、自尊心が高まり、尊重し合い、支え合う気持ちを育むことへとつながっていきます。」とあるように、一人ひとりの「自分らしさ」を保育者や周りの大人が理解することはもちろん、子どもたち同士も「その子らしさ」をお互いに理解して、まるごと受け入れ合うことができる温かな学級づくり、園づくりを目指しています。


6月 『アタッチメント(愛着形成)』  園長 齋藤 由美

らっこ組の子どもたちは、入園してから2カ月が経ちました。お家の方から離れるのが不安でいっぱいだった子どもたちも、担任の姿を見つけると笑顔で先生に向かって一直線に走っていくようになりました。子供園の生活に少しずつ慣れてきて、“この先生が自分の先生”“困ったとき、さみしいときに受け止めてくれる先生”“楽しいことをしてくれる先生”という安心できる人を見つけたようです。同じように4歳ぺんぎん組、5歳いるか組の子どもたちも、4月から新たに出会った先生との信頼関係を築き始め、やりたいこと、嬉しいこと、困ったことなど、安心して思いを出していく姿が見られるようになってきています。
私は、最近7カ月になる孫と過ごすことが多くあります。赤ちゃんは、まだ言葉をしゃべることはできませんが、様々な気持ちを、泣いたり笑ったり、機嫌が悪そうにしたりして表現しています。泣いてるときは私が「どうしたの?」「眠いのかな?」「暑いのかな?」「おなかがすいたのかな?」など、言葉をかけながら抱っこしたり思いを探ったりして、不快な気持ちを解消するとまた、機嫌がよくなります。最近では、自分の親や知らない人との区別がつくようになり人見知りが始まると、初めて会う人の顔をジーっと見て不安そうにします。自分の親や身近な人が笑顔で話していたりすると、徐々に安心して表情が柔らかくなっていきます。
子どもたちは、こうして赤ちゃんの時から、様々な気持ちを1日に何十回も泣くという方法で表現し、お家の方に受け止めてもらい安心する、といったことを繰り返して育ってきています。
みなさんは、アタッチメント(愛着形成)という言葉を聞いたことがありますか?「アタッチメント」とは、子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる「特定のだれか」にくっついて、安心感を得ようとする本能的な欲求や行動のことを言います。「心配なこと、いやなことがあっても特定の人に受け止めてもらうと安心できる。」という経験を繰り返すと、特定の人(保護者や先生)がその子にとっての安全地域となっていきます。その人がいれば、自分が安心だと感じて心が安定することができ、伸び伸びと成長することができます。
このくっつきは、誰にでも何人でもというわけではありません。親や、先生など特定の大人としっかりとした愛着形成をすることが大切です。そのためには、子どもの感情にしっかりと寄り添い、子どもの欲求を満たしてあげることが大切です。そして、自分のことをわかってくれる、安心できる存在と感じ取っていくのです。
このくっつきは、常に寄り添っている、声をかける、何か起こるのではないかと先回りして考えるということではありません。子どもが、不安を感じたとき、恐怖を感じたときなどに、安心できる安全地域となることが大切です。安全地域で安心した子どもは、また、安全地域から出て元気に行動をし始めます。
子どもたちは、この2カ月の担任との関わりの中で、園での愛着形成ができ始めているのですね。
愛着形成は、これからでも作っていくことができます。園生活の中で、お子さんがつまづいたり人との関わりでうまくいかないことがあったりした時など、突き放さず、丁寧にお子さんの心に寄り添ってあげてください。きっと安心して一歩を踏み出していくことでしょう。
これからも、子どもたちの安全地域となり一人ひとりが伸び伸びと遊び、安心して園生活を送ることができるよう努めてまいります。保護者の皆さんも子育てに不安を感じたときは、いつでも園にお声掛けください。