令和4年度 園便り

9月 心の傷を乗り越えて  園長 川嶋 佳恵

 2学期が始まりました。久しぶりに学級のみんながそろい、顔を合わせると、うれしそうに微笑み合ったり、おしゃべりをしたりして再会を喜ぶ様子が見られました。
 2学期は、楽しいことがいっぱいあります。心も体もひとまわり成長して、たくましくなり、様々な遊びや活動、行事に積極的に参加し、楽しさを味わいながら充実した時間になることと思います。私たち職員一同、新型コロナ感染症対策を徹底しつつ、様々な場面で、子どもたち一人ひとりが力を発揮して、輝く笑顔が見られるよう尽力してまいります。2学期もよろしくお願いします。

 7月19日にフィギュアスケートの羽生結弦選手が競技生活にピリオドを打ち、プロに転向しました。これまでのフィギュアスケート界でのプロは、技術面よりも表現力、芸術性重視でした。しかし、羽生選手は、プロ転向にあたって、「フィギュアスケートはスポーツなので、芸術性だけでなく、技術も更に磨いて、4A(4回転アクセルジャンプ)にも挑戦しながら、これからはプロのアスリート&アーティストとして1ランク上のステージで頑張っていきます」と決意表明をされました。そして、それからの1か月余り、フィギュアスケートに特化した様々な挑戦を続けてプロフィギュアスケーターの位置付けを大きく変化させている羽生選手。他を超越したプロフィギュアスケーターの今後が楽しみです。
 さて、そんな羽生選手ですが、北京オリンピックでは、ショートプログラムで氷の穴にスケート靴のブレードが引っかかり、4S(4回転サルコージャンプ)が1回転サルコーになるという不運に見舞われ、フリーでは前人未踏の4Aに挑戦したものの、転倒して総合で4位となりました。この時、できる限りの努力をし尽くし、「今の自分が今までで一番スケートが上手だ。」と明言できるほど技術面でも芸術面でも他を超越した羽生選手ですから、本人の悔しさや努力が報われなかった無力感、心の苦しみは計り知れなかったと思います。
 先日某テレビ局の番組で西日本豪雨で被災した女子高校生に向けてスペシャルアイスショーをするという企画に登場した羽生選手。演目は、「序奏とロンドカプリチオーソ」でした。北京オリンピックのショートプログラムでの演目です。羽生選手は、そのプログラムを「北京オリンピックでミスしてしまったある意味「心の傷」。だからこそ自分はまた改めて挑戦したいなと思いました」と。そして、張り詰める空気の中、ノーミスで、すべての要素がパーフェクトな「序奏とロンドカプリチオーソ」を滑り切りました。滑り終えた後は、やり切った達成感と過去の自分の心の傷を乗り越えた安堵感からガッツポーズを思い切り振り下ろしました。努力に努力を重ねて一番スケートがうまくなっていたはずの自分の思いがけないミスが深い「心の傷」となり、羽生選手自身怖くてなかなか踏み出せずにいたプログラム。最後に「でもやっと、これを乗り越えてまた前に進めるなって僕自身が思えたので。皆さんの中で、ほんの1秒でもいいので、前に進むきっかけになっていたらいいなと思います。」と結びました。怖さを払拭して心の傷に向き合い、乗り越える心の強さが素晴らしいなぁと思いました。

 人生は、誰にとっても平坦ではなく、思いがけない失敗や困難なことに直面して、前に進めなくなったり、もう二度と向き合いたくないと思ったりすることがありますね。羽生結弦選手の心の傷とは比べ物にならないくらいちっぽけですが、私も同じように心の傷となった経験がいくつもあります。例えば、小学校の5年生の時に他の子に比べて泳ぐタイムが早かったことから意に反して競泳の県大会に数種目エントリーすることになり、結果、順位が6人中の6位と振るわず、その後のエントリーの種目をすべて棄権してしまったことや、かつて高井戸西幼稚園に担任として勤務していたときに、全園児とその保護者の前で弾けていたはずの園歌のピアノ伴奏が途中から弾けなくなってしまい、数年の間、園歌を人前で弾けなくなったこと等です。ピアノに関しては、その後弾くチャンスが何度もあり、やがて心の傷を乗り越えることができました。しかし、水泳に関しては、その結果や棄権経験が深い心の傷となり、泳ぐことが大嫌いになり、その心の傷を乗り越えることはできませんでした。もし、私が県大会で心の傷を負った後、誰かがその傷に気が付いて乗り越えるきっかけを作ってくれていたら泳ぐことをもっと楽しんでいたかもしれません。もちろん心の傷を乗り越えなければならないのは間違いなく自分、本人です。しかし、大人になっても心の傷に向かい合い、乗り越えることは、怖いことです。まして、それが幼ければ幼いほど負った心の傷に向かう恐怖心や苦手意識は払拭が難しいと考えます。

 私たち、子供園の保育者は、幼児教育・保育のプロです。幼児期の子どもたちにとって大好きな先生、憧れの先生の存在は意欲や心の安定に大きな影響を及ぼします。だからこそ、どんな子どもたちの心もきゅっとつかんで、できることや好きなことだけではなく苦手なことや困難なこと、心の傷になっていることにも「がんばりたい!」「もう一度やってみよう」と前に進むきっかけとなり、「やってみたらできた。」を繰り返しながら自信に満ち溢れた幸せな子どもたちを育てることができるよう資質向上に努め、いつも他を超越した幼児教育・保育のプロでありたいと考えます。

9月 年少ことり組

 2学期が始まりました。☆ほしチームの子も、☀おひさまチームの子も、ことり組のみんなに会えて、とても嬉しそうです。
 9月は、保育者や他の幼児と一緒に、園生活のリズムを思い出し、安心して過ごせるようにしていきます。1学期に楽しんだ遊びを楽しみながら、新しいことに関心をもてるようにしていきます。また、曲に合わせて踊ったり園庭で走ったりして、みんなと一緒に体を動かして遊ぶ楽しさを感じられるようにします。

9月 年中うさぎ組

 久しぶりに学級のみんなで集まって遊べることを楽しみながら、少しずつ園生活のリズムを取り戻していきます。保育者や友達と関わる中で、1学期に楽しかったことや夏の経験を思い出したり、再現したりしながら楽しく遊べるようにします。
 運動会に向けては、いろいろな動きを経験し、体を動かす心地よさを味わえるようにしていきます。また、曲に合わせて踊ったり、イメージしたことを動きで表現したりする楽しさも感じられるようにします。学級のみんなで取り組む楽しさを感じて、一人ひとりがのびのびと自分の力を出していけるようにします。

9月 年長ぞう組

 9月は、久しぶりに学級みんなが集まり再会を喜び合えるよう、1学期に楽しかった遊びやみんなで一緒にする活動を再現して遊んでいきます。また運動遊びに親しみ、体を動かす心地よさを味わえるようにします。
 また、運動会に向けての取り組みが始まります。学級やグループの仲間と一緒に活動する中で、自分の考えを出したり、相談したりして仲間と力を合わせる経験ができるようにします。
 取り組みの中で、一人ひとりが自分の役割が分かり、自信をもって自分の力を発揮することができるように支えていきます。

8月 全ての子どもたちのためにある特別支援教育  教諭 山口 優香

 4月から始まった1学期もあっという間に終わり、明日から夏休みです。4月当初には登園する時に泣いていたことり組の子どもたちも、今では子供園で遊ぶことを楽しみににこにこ笑顔で登園するようになりました。うさぎ組の子どもたちは、自分の好きな遊びをすることや気の合う友達と一緒にいることがとても楽しそうです。ぞう組はみんなで力を合わせて夏祭りをしました。準備を何日も頑張り、ことり組やうさぎ組が楽しんでくれたことに達成感を感じていました。一人ひとり成長を感じられた1学期でした。

 今月は特別支援教育について書きたいと思います。私は今年度特別支援教育コーディネーターを務めています。保護者の皆さんは『特別支援教育』を知っていますか?国連総会は2006年12月に、「障害者の権利に関する条約」を採択しました。日本はそれに伴って2007年に同条約に署名、文部科学省は2012年に障害者権利条約の理念を踏まえ、障害のある子どもと障害のない子どもが可能な限り共に教育を行うこととしました。また「特別支援教育」とは、障害のある幼児児童生徒の自立や社会参加に向けた取り組みを支援するという視点に立ち(以下抜粋)適切な指導及び必要な支援を行うものとするということです。
 今は多様性を認め合う時代です。高井戸西子供園では、杉並区教育ビジョン2022『みんなのしあわせを創る杉並の教育』を基に、ニーズのある子どもに必要な支援が届くことを目指しています。具体的には、各学級の担任は学級の支援が必要な幼児について、特性を踏まえてどのような援助を行っていくか計画を立てています。それを基に、特別支援コーディネーターが中心となり、毎月1回園内委員会を開き、支援が必要な子どもについて実態把握や目標の設定、実践、評価をして、次の目標に向けての支援を考えています。また、特別教育支援コーディネーターは、外部専門家との連携や保護者の理解啓発、個別の教育支援計画の策定、個別指導計画策定の役割も担っています。外部専門家との連携では、年に数回来てくださる巡回相談員の先生に園の実態を伝え、ご助言いただいたり、就学相談や小学校との連携を行ったりしています。
 さて、ここまでの文章からは、特別支援教育は支援の必要な幼児のためにあると感じられたかもしれません。しかし、幼児期の子どもたちは一人ひとり個性や特性は違い、誰しも得意なこと、苦手なことがあります。日々の遊びや活動で一人ひとりが自信をもって取り組んだり、できた嬉しさを感じたりできるように、一人ひとりに合わせて取り組み方や関わり方、援助を考えています。そのように考えると、全ての子どもたちのために特別支援教育はあるのです。
 子供園では以上のことを活かし、今後保護者の方々への子育てに関する情報の発信や、小学校までに身に付けたい力の共有、子供園で取り組んでいる支援についてなどの情報共有を行っていきます。そして、子どもたちが一人ひとり互いの良さを認め合い、支え合っていけるような学級づくりを目指していきます。